設定が物語を生むメカニズムを考えてみる

 単純な話だけど、設定を煮詰めていくとそれを説明するための物語が発生するんだと思う。世界を考えて、歴史や神話の成り立ち、各国の情勢を見ていくといずれはそれらの状況を説明するための物語が見えてくると。ただし、私はここまでやるのが苦手みたいで、君継には「だから君は物語が書けないんだ」とか言われています。

 さて、設定を考えていくと物語に突き当たり、その逆も又然りなのだと思います。近年の流れというか一時期設定重視の流れがコンテンツ界に有ったようで、その反動かどうか分かりませんが「設定は物語を説明するもので有るべきだ」というような意見も見られますね。まあ、設定からサブエピソードや下手すると本編が出てくることもあるので、時間的、作業的な制約がないならどっちでもいいのかも知れませんね。

 話はそれる気もしますが、今回はせっかくなので例として第二新世界の成り立ちを企画的に見ていこうと思います。第二新世界の殆どが未公開の状態で申し訳ないのですが、こういった形でも少しずつ出していけたらいいなと思っています。

 第二新世界は5つのエピソードがありうち2つは世界を作った後に出てきたものです。

  • 第五領域の降臨(古代)
  • カラバ・ファルシスタ(古代の終わり)
  • 輝ける闇の伝説(近世、西側世界)
  • ベトニ戦争(近世、東側世界)
  • 獣と女王(未来)

 先日も書いた通りこの世界の根本となるのはカラバ・ファルシスタですが、第五領域と輝ける闇は成立した時期的にはそれよりもさらに古い企画です。手持ちの企画が増えてきたときに世界ごとに物語を整理して統合しました。

 さらに第二新世界は新世界という世界の派生です。まあ、新世界についてはまたいずれお話しましょう。ただ、両方とも人工の世界であるということを書いておきます。

 さて、第二新世界の基本的な特性について簡単にまとめてみます。

  • 人造の平面世界
  • 魔法はある
  • 強力なロストテクノロジーがある

 こんなもんで(w)薄い内容ですが、書くと長くなってしまうのでまた追々書いていこうかと思います。

 では、世界を作っていった過程を含めて表題の件を考察してみましょう。

1.世界の形成

 何度か書いていますがこの世界はカラバ・ファルシスタという企画で世界の発想が固まりました。強力なロストテクノロジー「奥義」を独占し、世界の3分の1ほどを実効支配していたカラバ・ファルシスタの内乱と崩壊を描く物語で、当時ほかに考えていた色んな企画からキャラクターを引っ張ってきてオールスターで派手にやろうと考えていました。要するに一発企画で世界設定とか考えていなかったのですね。というかカラバ・ファルシスタ事態が寄せ集め企画であったわけです。そして第二新世界は当初は私のキャラクターが暴れるための舞台でしかなかったわけです。

 さらに、カラバ・ファルシスタの原型はカノンのキャラクターを使ったバトルもののファンタジー同人誌企画でした。歴史的エピソード自体はカラバ・ファルシスタの続編として生きていますが、ラスボスと舞台となる都市名以外はすでに元ネタとは関係ないものとなっています。ああ、カラバ・ファルシスタという名前はある意味名残ですね。カノンのファンタジー→KFということで。

 さて、この企画を単独の世界として独立させるに当たって2つのエピソードがあらかじめ組み込まれていたことになります。1つはカラバ・ファルシスタ。もう一つはその原型で後日談となった話。しかし、この時点では世界ははっきりとした形を持ちません。

 次に新世界が出てきます。この外伝的な扱いとしてカラバ・ファルシスタを統合しようと言うことになって第二新世界はより具体的な形を持ち始めます。奥義とは何なのか、世界の特徴、地理的な状態を決めたのはこのころだと思います。

 簡単に補足すると新世界は、平面世界において世界の果てへ向かって旅をする探検家達のはなしで、丸太船をこいでいた頃から飛行機で空を飛ぶくらいの時代までを幾つかのエピソードでオムニバス的に語ろうという趣旨のものです。今は軽く凍結中ですけど。

2.エピソードの統合

 続いて追加されたのはカラバ・ファルシスタから約百年後の話である輝ける闇の伝説です。物語内での時代背景としては「手紙」の何十年か前、位です。これを考えた当時は中学生でした。カラバ・ファルシスタ、といかカノンのファンタジー同人誌より昔の企画です。スレイヤーズとかの影響で考えた英雄が活躍したり中二臭い技名が出てくるファンタジーな戦争エピソードの派生系です。前大戦で戦った英雄の弟子とかが主戦力となるような話ですが、現在はほとんど凍結中ですけどね。

 ともかく、このファンタジーをカラバ・ファルシスタのあとのエピソードとして統合することにしました。その際に敵勢力の参戦動機を第二新世界に合わせるなどしています。心理的にかなり統合するのを躊躇した企画ですが、最終的には収まりました。収まりましたが設定や各勢力の動機などがいまいち曖昧なので表だって発表するのは難しいかも知れません。

 もうひとつ、追加したのは第五領域の降臨というエピソード。強大な戦力を誇る第五領域の侵攻に対して侵攻される側の世界に根ざした竜(属性を完全に意のままにできる魔法使い的な人)達が対抗するみたいな話。とある王様と竜のお后が主人公で、と考えていましたが設定だけ残ってエピソードは殆ど抜けています。第二新世界的にも第二の神代といった感覚の時代なのでたぶん記憶とかは残っていないのだと思います。

 実を言うと元々第五領域と輝ける闇がくっついていたところにカラバ・ファルシスタをねじ込んだといっても良いでしょう。この、第五領域はエピソードや魔法などの設定ではなく第二新世界の精神的基盤、つまり宗教論を付与するのに割と有効な話でした。この話にあわせて神代の世界の構築のエピソードとかを考えていきました。

 世界の創造があって→世界に降臨してきた神々(超技術を持った人々)は何らかの理由で全ての記録と記憶を捨てざるを得なくなった。というのが新世界、第二新世界に共通する神話です。その神話から二つの世界の有り様を決定的に分けたのが第五領域という神々の降臨です。この事件により第二新世界にはかつて神々が捨てた技術の残滓がもたらされます。

 と、言うような形で割と似たような気がする世界を組み合わせて一つの世界を組み立ててみました。とはいえ、思い返して見ると輝ける闇や第五領域の設定やエピソードはたぶん、そのまま使うのは難しそうな気がしますね。ただ、世界観に組み込んでおけば劇中で言及することも出来ると思うのでそれもまた良いかなと思います。

3.世界からのエピソードの発生

 そして、まとまった世界からいくつかのエピソードが産まれていきます。

 その一つが「手紙」で書いたベトニ戦争です。まず、輝ける闇のエピソードは第二新世界の中央大陸の西側の話なので東側を考えてみようという発想がありました。それでいろいろ考えていったら手紙ができたという感じです。

 ベトニ戦争のネタを考えた際、一番最初は戦記物っぽい感じでやろうとかフィギュアを作ろうとか考えていました。あとは当時読んだ上遠野浩平氏の推理ファンタジーの影響が勢力の情勢設定にあります。

 もう一つはノリで考えた獣と女王。これは使うかどうか分かりませんが、今のところ第二新世界の終着点としています。使わなそうな気もしますが。

 ということで、今回は世界観の設定から物語を引っ張り出す話に便乗して第二新世界のことを書いてみました。参考リンクとして発表済みの作品のページを張っておきます。

手紙

同人誌「缶の底」(Tra-izon、猪間神時著)