我が家の無線LAN環境は、いまだに802.11nを使っている。
環境を構築したときは、まだ11acに対応したクライアント機器を所有していなかったので、世代の古いAirMacとTime Capsuleを買ったのだ。最新のTime Capsuleは場所を取る、というのも大きな理由だった。
しかしコンピューターというのは新陳代謝するもので、今では11ac対応機器のほうが多くなってしまった。そろそろ、11acをベースとした環境に乗り換えたいところだ。
一方で対応していない機器もまだある。最新機器だけではなく、古い機器でも問題なく使える環境にしなくてはならない。
昔であれば新しいAirMacに買い替えたところだが、実はAirMacもTime Capsuleも長く新製品が出ていない。
最新のものも、11acには対応しているものの、古いwave 1についてだけで、新規格であるwave 2には対応していない。USBも2.0止まりだ。
- それどころか、ワイヤレスルーターのチームを解体したという話まである1。今後Appleが無線LAN製品を出す可能性は低い。
すぐに新調するつもりはないとはいえ、備えあれば憂いなしだ。
他社製のルーターにも、目をつけておいたほうがいいだろう。
NASはどうする?
ルーターについて考えるまえに、NASをどうするか決めなくてはならない。
我が家ではTime Capsuleを使ってTime Machineバックアップを取っているし、さらにもう一台ハードディスクをぶら下げて、そちらもNASにしている。
ルーターに付属するNAS機能を使うか、それとも専用のNASを買うべきか。
しかも、Time Machineのバックアップ先に使用できるものでなければならない。
後述するが、これには特定の要件を満たしている必要がある。
専用のNASはともかく、ルーターの簡易NAS機能についてそこまで調べるのは現実的ではない。置き場所の自由度も考えて、専用のNASを買ったほうがいいだろう。ルーターは家の中心に置くべきだが、NASはネットワークにつながりさえすれば、邪魔にならないところのほうが良い。
Time Machine over SMB
ところで、Time Machineに使用されているApple Filing Protocol (AFP)は、次期macOSであるHigh Sierraでは使えなくなる。
しかし、すでに現行のSierraの時点で、SMB経由でのTime Machineバックアップが可能になっていた!
macOS Sierra: Time Machine に使用できるディスクには、このようにある:
バックアップディスクがネットワーク上にある場合は、ネットワークサーバが SMB(Server Message Block)ファイル共有を使用できます。
- かつてAppleは、無線LAN経由のTime MachineにはTime Capsuleを使うか、AirMac Extremeにストレージを接続してNASとして使うか、その2つしか正式には認めていなかった。これは大きな進歩と言える。
Appleのドキュメントでは、これは「Time Machine over SMB」と呼ばれている。
ただし、この「Time Machine over SMB」は、(前述したとおり)技術的な要件を満たす必要がある2。
そこで、ルーター・NASを出している有名な企業のウェブサイトで、これについての記述を探してみた。
メーカー名 | 記述 | ページ |
---|---|---|
QNAP | あり | Time Machine を使い、Mac を SMB 経由で QNAP NAS にバックアップする – QNAP |
Western Digital | あり | How To Start Time Machine Backups Over SMB in macOS Sierra 10.12 | WD Support |
Synology | あり | DiskStation Manager – ナレッジベース | Synology Inc. |
NETGEAR | あり | How to setup Time Machine with your NETGEAR router | Answer | NETGEAR Support |
BUFFALO | SMBについては不明 | 製品をTime Machineのバックアップ先に設定する方法 – アンサー詳細 | BUFFALO バッファロー |
ASUS | SMBについては不明 | Time Machine (Mac) の設定方法 |
Aterm | 見つからず | – |
QNAPとWestern Digitalは、明確にTime Machine over SMBについて書かれたページを見つけた。
Synologyはその内容から、AFPとは別にSMBでもTime Machineバックアップが可能であることが伺える。
NETGEARは特筆していないが、手順ではSMBプロトコルで接続しているし、更新日時もSierraのリリース後である。
BUFFALOおよびASUSは、Time Machineについての記述は見つかったものの、情報が古く、SMBについては不明。
Atermに至っては、Time Machineについての記述すら見つけられなかった。
明記されているメーカーから出ているものであれば、対応している製品があるということだ。
- もちろん、これから増えていくのだろうと思うが。
ストレージ内蔵型か、ケースか?
NASについては、もう一つ決めておくことがある。
ストレージが内蔵されているものか、自分で入れるタイプ(いわゆるNASケース)か?
これはNASケースを選ぶつもりだ。
すでにあるハードディスクを流用したいという理由がメインだが、もしもハードディスクを交換したくなったときにそれができるというのも大きい。
最近は8TB(!)のハードディスクなども売っている。極端な話、こういった高級なものを使いたくなったときのため、換装するハードルは低いほうがいい。
まとめ
さて、どんなものを買うべきか、多少は明らかになった。
まとめると、
- ルーターとNASは別
- NASはTime Machine over SMBに対応している、ケースのもの
ということになった。
まとめてみると大したことはないように見えるが、これ以上の要件は実際に製品を検討する段階で決まるものだと思う。
長くなったので記事を分ける。
次回は本命のルーターについて考えたい。
追記
いくつか重要な点を失念していた。
プリンターのことと、APFSのことである。
すっかり忘れていたのだが、我が家のプリンターはネットワークプリンターではない。
インターフェースもUSBしかない。Time Capsuleに繋げて、そのプリントサーバー機能を使っていたのだ。
なので、加えてNASには、
- USB-A メス端子
- プリントサーバー機能
- (これは必須ではないが)Bonjour
が必要になる。
もっとも今時のNASで、これらの機能がついていないものを探すほうが難しいだろう。少し調べた限りでも、エントリーモデルにさえついていた。
ルーターにも当然ついているだろうが、ルーターではなくNASにぶら下げるのは、これも置き場所の自由度を考えてのことだ。家の中心にプリンターが鎮座しているのは、非常に鬱陶しいだろう。
そしてもうひとつ、Apple File System (APFS)のことだ。
High Sierraにおける、AFPの廃止以上に大きな変更点が、このAPFSの導入である。
High Sierraでは、ブートディスクのファイルシステムが従来のHFS+ (Hierarchical File System Plus)からAPFSに変更される。このため、Time MachineもHFS+ではなく、APFSを前提にしたものに変更されるだろう。APFSとHFS+は互換性がないからだ。
- たとえばHFS+のタイムスタンプは秒単位だが、APFSのタイムスタンプはナノ秒単位だし、文字の大小を区別しなかったHFS+に対して、APFSは区別する(こともできる)。
つまり、NASのシステムがAPFSを扱えなければならないということだ。
とはいえ、APFSはリリース後にオープンソース化することが発表されている。対応は時間の問題だろう。
気が急いて対応する前に製品を買わないことだけ注意していればよい。そうでないと、おそらく少々面倒くさいことになる。
理解が誤っていたので追記。
ファイルシステムがなんであれ、転送の際にはファイル共有プロトコルを使用する。NASのOSがAPFSを扱える必要はなく、Time Machineで使うだけなら可能だろう。
ただし、まだAPFSは正式リリースしておらず、やはり不安は残る。というのも、Time Machineの側が大きく変わるだろうと予想されるからだ。
HFS+で作られたTime Machineバックアップと、APFSで作られたTime Machineが同じとは思えないし、単純にマイグレートしてすむものでもないだろう。どうせならHigh Sierraリリース後に新規に作成したい。